Unit
ユニット
エーテル



ユニット名の由来
《前編》
青葉梟「んー」
神 堂「……」
青葉梟「あー」
東海林「……」
青葉梟「だぁああ~!」
神 堂「黙れ」
青葉梟「るせっ。そういう唯姫は考えてあんのかよ、ユニット名」
神 堂「候補は既に複数準備している。改めてそこから選別したものを共有する」
青葉梟「お~お!さすが唯姫。だったらもったいぶらねぇで、候補が出た時点で教えろって。なあ、鈴音?」
東海林「……」
青葉梟「鈴音? どした?」
東海林「あ、ごめん。ユニット名の話だよね。僕も候補を……」
青葉梟「いや、待て待て。お前がこんなに上の空になってるなんて、よっぽどのことだぜ。何かあったのかよ?」
神 堂「もしかして、ご家族のことか?」
東海林「うん……実は母が体調を崩して、先週から入院してるんだ」
青葉梟「マジか。今何時だ!? 面会時間、まだ間に合うよな!?」
東海林「光加人……」
青葉梟「ここは俺と唯姫に任せて、お前は病院に行ってくれ。体が弱ってる時ってのは心細くなるもんだからな、鈴音の元気な顔見れば安心するだろ!」
神 堂「今回ばかりは、そこの単細胞に同意する。早く行ってやれ」
東海林「ありがとう……それじゃあ、今日はお先に失礼するね!」
青葉梟「っつーわけで。おい、唯姫。ユニット名の候補、教えろよ」
神 堂「同じことを言わせるな。候補はあくまで候補であって、今共有するべきものではない」
青葉梟「んだよ、堅っ苦しいこと言うなって」
神 堂「そういうお前はどうなんだ」
青葉梟「俺はもう、最っ高の名前をいくつも考えてるぜ!」
神 堂「最高の名前だと?」
青葉梟「おう! 聞いて腰抜かすんじゃねぇぞ?」
神 堂「……はあ」
青葉梟「なんでため息ついてんだよ」
神 堂「大方、『ケミストリー』だの『ソウル』だの、お前がよく口にしている、明らかに意味を取り違えた言葉が並んでいるんだろう」
青葉梟「えっ……」
神 堂「?」
青葉梟「おま、唯姫っ、お前!」
神 堂「なんだいきなり、騒々しい」
青葉梟「もしかしてお前も、魂に高々とビジョン掲げちまってるのか!?」
神 堂「おい、何を言っている。距離を詰めてくるな」
青葉梟「いいから、俺の質問に答えろって!」
神 堂「言っている意味がわからない以上、答えようがない」
青葉梟「だーかーらー! お前の胸の中にも俺と同じビート、しっかり刻んであるんじゃねぇかってことだよ!」
神 堂「さっきから言っていることが全く理解できないが?」
青葉梟「そうかそうか~。こりゃあユニット名もあっと言う間に決まりそうだな! 鈴音を安心させてやれるぜ!」
神 堂「……どこからそういう思考が出てくるんだ。先が思いやられる」
《後編》
東海林「お疲れさま。ごめんね、遅くなって」
青葉梟「いや、俺たちも今来たところだ。悪いな、看病中に」
神 堂「具合はどうなんだ?」
東海林「だいぶよくなって退院のめどもついたし、今は母の友達がお見舞いに来てくれてる」
青葉梟「よかったな。ひとまずは安心だ」
神 堂「看病する側が倒れては意味がない。無理はするな」
東海林「光加人、唯姫、ありがとう。それじゃあ……早速ユニット名の話をしようか。候補が決まったんだって?」
青葉梟「おう! って、言いてぇところなんだけどよ」
東海林「何かあったの?」
青葉梟「せっかく話がまとまりそうだったのに、どっかの誰かが面倒くせぇこと言い出したんだよ」
神 堂「全くまとまってなどいないし、俺は自分の考えを口にしただけだ」
東海林「どういうこと?」
青葉梟「唯姫のやつ、突然『俺たちにユニット名はいらない』とか言い出してさー」
東海林「いらない?」
青葉梟「ほら見ろ。鈴音もびっくりしてるじゃねーか!」
神 堂「……」
東海林「唯姫。どうしてそう思ったのか、聞かせてくれるかな」
神 堂「俺たちはいつでも頂点にいる。だから、名前など必要ない」
東海林「……なるほど」
青葉梟「おいおいおい、『なるほど』じゃねーだろ!? 俺たちがテッペンにいるっつーのはその通りだが、この世界を照らし続けてる、あの真っ赤なヤツにだって名前が付いてんだぜ?」
神 堂「お前が言っているのは太陽のことか。それは周りが名付けた呼称であって、太陽そのものが名乗り出たわけではない」
青葉梟「はぁ? 太陽は喋れねぇに決まってんだろーが」
神 堂「……」
青葉梟「シカトすんな」
東海林「唯姫の言ってることもわかるよ。頂点に立つ者は唯一無二、だから、名前なんて必要ないってことだよね?」
神 堂「理解力のある人間が相手だと話が早い」
青葉梟「何だと!?」
東海林「まあまあ。確かに、唯姫の言う通りかもしれない。だけど……きっとパッセンジャーのみんなは、僕らへの想いやLATCH!の愛を、名前に乗せて呼びかけてくれるはずだよ。そのための呼び名を僕らが名付け、名乗るのも、また僕らの使命だと思う」
青葉梟「さすが、いいこと言うじゃねーか。テッペンとってる俺たちの使命ってヤツだな! で、鈴音、何か候補はあるのか?」
東海林「……Aither」
青葉梟「ん?」
神 堂「エーテル?」
東海林「うん。母の病室から……星が見えたんだ。明るい街の空に輝く存在に、心を動かされた。あれこそが僕たちだし、僕らはああじゃなければいけないんだって」
神 堂「お前なりの『頂点』を表したのが、その言葉ということか」
東海林「そうだね。僕たちは詰まるところ……それぞれが『頂点』だ。Aitherは天上の物質であり、天界を構成する『第五元素』を意味する。僕らは、星であると同時に基盤でもある……そういう意味を込めたんだ」
青葉梟「エーテル……いいじゃねーか! 俺たちがパッセンジャーに届けたい愛は、宇宙みてぇにどデカいしな! なあ、唯姫、お前もいいと思ってるだろ?」
神 堂「ああ。異論はない」
東海林「よかった。ありがとう、二人とも。じゃあ、これから僕らはAitherとして、改めてLATCH!を……いや、世界を盛り上げていこう」
青葉梟「おう!」
神 堂「ああ」