Unit
ユニット
ひといき



ユニット名の由来
《前編》
咖山「あっという間に一皿目を平らげてしまったねえ、雷電くん」
雷電「昨日から一皿目はアキバ盛りカレー1って決めてたんす。咖山氏こそ圧倒的速度で二皿目突入するのでは」
咖山「此処に来るのは久し振りだからね。今日は心ゆくまで満喫したいと思っているよ」
雷電「然り然りってことで追加注文しますか」
咖山「うん、ついでにラッシーももらおうかな」
雷電「りょ……そうだ咖山氏、二皿目待ってる間にユニット名の案考えといてもらっていいすか?」
咖山「……ゆにっとめい?」
雷電「おっとこれは波乱の予感。じゃあ先に注文しまーす」
雷電「はい注文完了ですユニット名の説明いきますか」
咖山「すまないね。お願い出来るかい?」
雷電「無問題(モーマンタイ)すよ。えーユニット名ってのは名前の通りユニットとして活動するにあたっての呼称すね。他の団体とごちゃらないようにつける的な。咖山氏、イメージ湧きます?」
咖山「そうだねえ、短歌や俳句の結社名のようなものだろうか」
雷電「激渋解釈あざす、方向性ばっちりっすわ」
咖山「ああ、良かった。それならそうだねえ……うーん、何が良いだろうか。己(おれ)達の活動を表す、インパクトのある単語を使うと良いのかな」
雷電「あー確かに? インパクトはガチ大事すね覚えてもらいやすいってメリットもありますし」
咖山「雷電くん、ええと……」
雷電「どぞ」
咖山「『カレー倶楽部』」
雷電「最の高すね。名は体を表す地でいってますはい第一候補けてーい」
咖山「ありがとう。だが第一候補にするには、いささか早過ぎやしないかい?」
雷電「いや実際いいネーミングだと思うんで。『カレー』は自分達のソウルフード的側面がありますし」
咖山「ふふ、それもそうだね。他にも思い浮かぶが、カレーや食べ物以外で、己達を表現する単語も考えてみるのはどうかな」
雷電「ありよりのあり」
咖山「雷電くんは、何かあるかい?」
雷電「んー? そすねー……」
咖山「君が時折聞かせてくれる、『永遠に語り継がれるべき詠唱呪文百選』の中から単語を採るのはどう――」
雷電「ぐはぁッ(机に突っ伏す)」
咖山「雷電くん!?」
雷電「咖山氏それえぐいて……神々のネーミングをたとえカケラでも使わせてもらうなんてできないす……!(ハッとして)あっ、すませんたぶんもう自分達のカレー運ばれてくるんでいったん落ち着きますわ」
咖山「ふうむ、名づけの道は険しいねえ」
雷電「すね!」
《後編》
雷電「……はあ。二杯目食ったら落ち着きました」
咖山「ココナッツカレーと魯肉飯の相性が良いとは、意外だったね」
雷電「じゃあ咖山氏、改めてユニット名ちゃんと考えてみましょうか」
咖山「うん。食べ物とは別の方向から検討するのはどうか、という話だったね」
雷電「はい、その流れでした」
咖山「横文字よりは、日本語の方が己(おれ)達らしいだろうか」
雷電「あーそれは確実にそうすな。ちな咖山氏はペンネームとか付けたことないんすか?」
咖山「学生の時分に、少し考えたことがあったよ」
雷電「ほお? どんなのか聞いても良き?」
咖山「勿論。己の名前は『りひと』だろう? それをもじって、『ひとり』」
雷電「咖山氏らしさランキング100週連続第一位~~」
咖山「『りひと』のドイツ語表記も考えてみたのだが、『光』や『明かり』という意味だからね、なんだか気取り過ぎな気がして」
雷電「あー、自分の名前だからこそちょっと肩の力抜いた表現に寄せときたいみたいな」
咖山「いかにも。そういえば、雷電君もゲームをする時に決まって名乗っている名があっただろう? 確か――」
雷電「あーはいはい。それじゃあユニット名は自分達の名前をもじる系とかどうすか?」
咖山「ふむ、名案だ。雷電遊生……咖山喱人……」
雷電「咖山喱人……雷電遊生……り、ゆう、うーん」
咖山「……ひといき」
雷電「ん?」
咖山「『人生(じんせい)』と書いて、『ひといき』はどうだろうか」
雷電「えっっっっも!」
咖山「『花發多風雨(はなひらけばふううおおし)
人生足別離(じんせいべつりたる)』」
雷電「あーそれってもしかして『さよならだけが人生だ』ってやつですか?」
咖山「まさしく。于武陵(うぶりょう)が詠んだ『勧酒』の一部だ。今雷電くんが話していたのは、井伏鱒二の有名な訳だね」
雷電「しかしさよならだけが人生って、ちょっと切な過ぎやしません咖山氏??」
咖山「ふふ、そうだねえ。確かに、言いようのない切なさを感じてしまうね」
雷電「っすね。推しが途中退場するネタバレを踏み抜いた時に通じる的な……」
咖山「己はね、雷電くん。この詩を詠じる度に、永遠などないことを思い知らされるんだ。だが……なんというかな。だからこそ、懸命に生きようとも思えるんだよ」
雷電「懸命に生きる、っすか」
咖山「そう。笑ったり泣いたり、恥をかいたり、大切な友人とカレーを食べたりしながらね」
雷電「はー。どんなふうに生きるかとか真剣に考えたことなかったっすわ。推しの生存はすべてこの目に焼きつけておかねば精神でやってきましたし自分の好きなことを仕事にできてはいますけど……咖山氏の視点、やっぱさすがすね」
咖山「いやいや」
雷電「『人生(ひといき)』……まーじで最高だと思います。オタクライフこそ我が人生(じんせい)、こうやって二人で食に繰り出すエモ時間もまた然りってことで、ユニット名は『人生(ひといき)』でいきましょう!」
咖山「うん。そうしよう、雷電くん」
雷電「はい、それしかないすね」
咖山「では、そろそろ?」
雷電「3杯目、いっときますか」