STATION IDOL LATCH!

STORY

#01

《前編》

百瀬「――ということで、『シオルーム』エンディングのお時間がきてしまいました。
本当に、あっという間に時間が経ってしまうね。僕にとって、みんなと過ごせる時間が何よりの癒しです。
さて、SNSにもアップしたんだけど、今夜は特別なお知らせがあるんだ。それを待ってくれていたパッセンジャーも、多いかもしれないね。
最後になってしまったけど、お話するね。ああ、なんだかドキドキするな。実はこの度、僕を含めて、LATCH!の全ユニットが、ユニット名をつけることになりました!
『つけることになった?』……って戸惑ってる人もいるみたいだね。そう、せっかくこうして話をしているから、みんなにもアイデアをもらいたいと思ってるんだ。
僕のSNSに、どんどんアイデアを送ってほしいな。みんなからのメッセージ、待ってるよ」
 
翌日。
 
百瀬「『モモ』…『S・I・O』…『silky』……ふふ、みんないろいろ考えてくれてる。たくさん送ってもらえて嬉しいな。だけど、どれもよく考えられていて力作だし……ここからどう絞っていこう……」
店員「ご注文はどうなさいますか?」
百瀬「じゃあ、ユッケジャンの定食とジャスミンティーをお願いします」
店員「かしこまりました」
神堂「こっちは、水冷麺と焼肉のセットを」
百瀬「!?」
 
百瀬「え……神堂くん?」
神堂「あと、野菜のりまきも」
店員「かしこまりました」
 
百瀬「えっと……いつから、隣の席に?」
神堂「お前がスマホに向かって呆けた顔をしている時には」
百瀬「声、かけてくれたらよかったのに」
神堂「食事に来ただけだ。お前と無駄話をしに来たわけじゃない」
百瀬「はぁ……相変わらずのマイペースだね。神堂くんって、新大久保のお店にも来るんだ。自分の陣地以外には興味がないのかと思っていたよ」
神堂「ここは新宿駅からも近い。職安通りを越えたらすぐに自分の縄張りだと考えるその思考回路はおめでたい限りだな」
百瀬「別に、僕の縄張りだなんて言ってないけど。本当にひとこと余計だよね」
神堂「感想を述べたまでだ」
百瀬「……今、SNSチェックしてるから、話しかけないでくれる?」
神堂「俺からは一度も話しかけてなどいないだろう」
百瀬「……はいはい、そうですね~」
神堂「これは独り言だが……ユニット名をパッセンジャーから募ったがために取捨選択できず、一人で追い込まれているような人間はここにいないだろうな」
百瀬「えっ、なんで知ってるの? いや、別に追い込まれているわけじゃないよ。パッセンジャーのみんなと交流して、それが僕の新しい名前として残るんだ。その幸せを噛み締めていたところだよ」
神堂「東海林が言っていた。パッセンジャーを想うがあまり決めきれずにいるのでは、とな。そして、なぜかあいつが胃を痛めていた」
百瀬「なるほどね。東海林くんらしいな。東海林くんに会ったら伝えておいてよ。僕だって、少しは成長しているんだよって」
神堂「…………」
 
店員「お待たせいたしました」
百瀬「ありがとうございます」
神堂「どうも」
 
二人はそれぞれ食事を始めた。

《後編》

神堂「お前がただこれだと思うものに、決めればいい」
百瀬「え……?」
 
店員「お下げしてもよろしいですか?」
神堂「ごちそうさまでした」
百瀬「はや! しかも、すごく綺麗に食べてる……」
神堂「じゃあ、俺はこれで」
 
百瀬「あ……あのさ……」
神堂「なんだ」
百瀬「だから、その……ありがとう」
神堂「? ……おごりはしないが」
百瀬「(苦笑)そうじゃないよ。今……まあ、アドバイスというか、ちょっとしたひとことを、もらえた気がしたから」
神堂「……別に、俺は何も言ってはいない」
 
店員「ありがとうございました」
 
百瀬「本当に素直じゃないな。……まあ、僕が言えたことじゃないか」
 
翌週。
 
百瀬「こんばんは。シオルームにようこそ。今夜は、月明かりが澄んだ素敵な夜だね。みんな、どんなふうに過ごしてた?
僕は今夜も、パッセンジャーのみんなと過ごせる時間をとても楽しみにしていたよ。
 
さっそくだけど、ユニット名についてお話しようかな。
みんな、突然の募集だったのに、たくさんアイデアを送ってくれてありがとう。もちろんすべてのコメントに、目を通させてもらったよ。
それで、いろいろと考えてユニット名を決めたので、お知らせしたいと思います。
 
決定したユニット名は……『eS(エス)』です!
 
もらったコメントの中で、志生のS、新大久保のS、ソロのSとか、Sの文字をたくさんもらったのが、僕の中では大きなきっかけになって。
それから、じっくり考えてみたんだ。
僕はこれから、LATCH!としてどうありたいのかって。
ううん……これまでの僕は、『こうありたい』という理想に縛られすぎていたんだと思う。
だからこれからは、心が自然と動いていくままに行動してみるのもいいのかもしれない……なんて、思ったんだ。
 
ユニット名にした『eS』っていう言葉は、フロイトの心理学用語も参考にしていて。別の呼び方では『イド』ともいうんだけど、人間の本能的な欲求を示したもの。
あれがしたい、これがしたい、楽しい、嬉しいとか……自分の心が求めていることを大事にしていきたいっていう、僕の願いも込められてる。誰かともっと分かり合いたい、とかね。
 
あ。応援のコメント、こんなにたくさん……ありがとう。
ちなみに、『ソロなのにユニット名?』っていう質問ももらっていたんだけど、僕はパッセンジャーあっての僕だと思ってるんだ。
だから、みんなも、eSのメンバーだからね。
これからも、僕はパッセンジャーのみんなと共に歩んでいきたい。心の底から、そう思ってるよ。
LATCH!の一員であり、eSの百瀬志生として、これからもよろしくね」